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岩井流家元 岩井友見が創作
「中将姫誓願桜伝説」
 
 女優の傍ら日本舞踊岩井流家元としても活躍している岩井友見が、岐阜市大洞の願成寺境内にある中将姫誓願桜を題材にした新作舞踊劇を創作。ヒロイン中将姫の命日といわれる3月14日、JR岐阜駅前のじゅうろくプラザ二階ホールで初演。立見客が出るほど日舞としては異例と思えるほどの支持を得た。
 題材となった中将姫桜は、岐阜県本巣市にある根尾の淡墨桜と並ぶ名物桜。世界でも珍しいヤマザクラの変種で白に近いほんのりとした可憐な花弁が幾重にも重なっているのが特徴。昭和4年に天然記念物の指定を受け、親しまれたきたという。今回の創作は岐阜市が市制120年に当たるところからこれを記念して依頼されたとかで家元友見が一年がかりで作・演出・振付・主演と一人四役を受けもって取り組んだ。
 伝説の主人公中将姫は動乱の奈良時代、時の右大臣藤原豊成の娘として生まれ、最後は尼僧となって29歳の若さで浄土へ旅立つたという。昨春、創作の依頼を受けた家元は奈良の伝わる豊成の屋敷跡や姫が曼荼羅を織ったと伝わる当麻寺などを巡って構想。作曲を大和楽の家元大和久満に依頼。一時間を超える大作に仕上げた。
 舞台は奈良二上山の山麓、当麻寺をバックにしたプロローグからエンディングまで全7景。「私は中将法如と申します」という尼僧姿のモノローグから、父豊成と過ごした幼いころの楽しい日々を描写したあと、優しかった母と死別。後添えにきた嫉妬深い照夜の前との狂気の日々。そのあとがらりと趣きをかえで幼なじみ正常との回想も入れて、とかく単調になりがちな伝記物にふくらみをつけてみせた。照夜の前の扱いなどはまるで源氏物語の六条御息所ばり。いやな役どころをベテラン杜久松が受けもって個性十分。舞台に彩りをそえる里人なども門下がきっちり。リーダーの友見は尼から娘時代を変化をつけて色分けして見せた。
 父豊成と正常二役を演り分けたゲストの林啓二はまさに似合。姿かたちといい、セリフも確か。この作品が、日ごろ日舞に接することの少ない客層に受け入れられたのも主役二人の「役者」としての力量があればこそ。外部からの参加といえば地元岐阜から語り部尊心比丘尼として出演した松本亜梨も期待通り。長年、源氏物語の女人抄で舞いと語りをうまくミックス。「語り舞」という独自の表現を身につけてきた人らしく物語の運びをなめらかにした。大和久満家元が自ら三挺三枚で支援した地方陣があっての成果。この作品は岐阜のあと秋に東京・国立劇場でも再演するというからことし芸能生活40年を迎えた家元友見にとつては節目を示す舞台の一つになろう。
岡安辰雄・記

人権のひろばNo.73掲載記事
『中将姫誓願桜』
春風物語「恋の呂昇(ろしょう)」
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